冥王星にクトゥルフ領域があった

Pluto in false color 天文学
Pluto in false color

興味深い論文を見つけた

最近になって冥王星に『クトゥルフ領域』なるものがあるのを知りました(論文は2017年のもの)。ミ=ゴたちの住むユゴス星(冥王星)に クトゥルフ領域 があるのはシナリオに使えそうなネタです。

冥王星で有名なハート型の『トンボー地域』は存在を知っていたのですが、その隣の褐色の領域(アイキャッチの左下部分)がクジラの形をしており通称『クトゥルフ領域』と呼ばれているようです。

この発見は天文学的に地球と月の関係に似た発見がされています。

論文の内容について

ここから小難しい話。数年経っているし意訳を含め記載するため今ある定説とは異なる可能性があります。以下、参考論文。

Sekine, Y., Genda, H., Kamata, S. et al. The Charon-forming giant impact as a source of Pluto’s dark equatorial regions. Nat Astron 1, 0031 (2017). https://doi.org/10.1038/s41550-016-0031

https://doi.org/10.1038/s41550-016-0031

Abstract より

赤道付近にできた褐色の領域(通称:クトゥルフ領域)は大きな物理学的事象が発生しなければ、この色にはならないだろうとの見解があった。
その大きな現象に当てはまる現象がないか検証したところ、冥王星の衛星『カロン』とのジャイアント・インパクトによる影響だろうとの結果が出た というのが論文の内容でした。

Planetary Smash-Up

ジャイアント・インパクトとは

惑星が作られる過程で起こる、とても大きくなった惑星の赤ちゃん同士が衝突する現象。
特に有名なものとして、地球に今の火星ほどの大きさの惑星(ティア)が衝突し、月ができたとされている説がある。

ジャイアント・インパクトを起こした『カロン』は、地球の月と同じく惑星の大きさに対して異様なほど大きい衛星となっています。そのため、月と同じように冥王星にも過去にジャイアント・インパクトが起こったのだろうと予想されています。

それにより大爆発を起こし、冥王星は高温状態で自転を続けます。その結果、赤道付近の液体の水が高温で熱せられ続け、有機化合物が生まれたことにより褐色へと変色していったというシミュレーション結果が出ました。

この結果がクトゥルフ領域が褐色であることを説明でき、過去にジャイアント・インパクトが起こっていたことの裏付けとなりました。

論文記事の内容について

論文の全てを読むことができないので、以下別の解説記事からになります。

2017/01/31
冥王星のクジラ模様は衛星カロンを作ったジャイアント・インパクトの痕跡だった
関根 康人(地球惑星科学専攻 准教授)
玄田 英典(東京工業大学地球生命研究所 特任准教授)

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2017/5239

この論文が出たきっかけが、探査機ニューホライズンズで冥王星に接近した観測が出来たためだ。探査機により冥王星の詳細な地形データを撮ることに成功し、多様な物質や地形が存在していることが分かるようになった。このようになるためには何が起こったのかという所で様々な説が考えられています。

この論文により『カロン』がジャイアント・インパクトで出来た衛星であることを裏づけた。さらにジャイアント・インパクトが起こるためには、太陽系の質量のほとんどを持っているガス惑星(木星や土星)が大きく移動し、周囲の惑星に影響を与えていたという証拠にもなっているという結果になっています。
(この辺りは、惑星移動やグランド・タック・モデルと関わってくる、また少し難しい話です。)

冥王星とクトゥルフ神話

冥王星と言えばミ=ゴが住んでいるミゴス星。クトゥルフ神話の神話生物は冥王星由来なことも多く、発見した人はクトゥルフ神話が好きなのだろうかなどと思っていました。

冥王星は地下に氷があることや、有機物があるかもしれないことなどが発見されていますが、まだまだ観測が進んでいないことから、それらが本当のことかも分かっていません。

私はよくシナリオを作るときにこういった結果から if を探すことが多いのですが、じつは現在も冥王星の地中にはミ=ゴの帝国があり、その生命活動の痕跡を人間が観測という形で追っているだけなのかもしれないなど考えるととても楽しいです。
そう言った話題でもあり、太陽系の過去を証明するとても関心の高い論文でした。(6年前の論文に今気づいた点には目を瞑って)

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